飲食店の原価率とは?計算方法や抑える方法を解説
2023.06.08
安定した事業運営を図るうえで意識しておきたい指標に、原価率があります。原価率とは、売上高に対する原価の割合のことです。飲食店における原価は、料理や飲み物をつくるのにかかる食材費を指します。
本記事では、飲食店における原価率の内容や計算方法、原価率を抑える方法などについて解説します。
目次
飲食店の原価率とは?
原価とは、製品・サービスを顧客に提供するまでにかかった費用のことをいいます。飲食店では、提供する料理や飲み物をつくるのにかかる食材費が原価にあたります。
売上高に占める原価の割合を原価率といいます。利益を出すためには、原価率の適正化が必要です。飲食店における適正な原価率は業態により差はありますが、一般的に30%前後とされています。
原価率の計算方法
原価率は以下の計算式で算出します。
- 原価÷売上高×100=原価率(%)
原価率が低ければ利益が大きくなりますが、原価率を下げれば下げるほどよいというわけではありません。
例えば、原価率を抑えるために食材の質を落とすと、料理全体の質の低下につながるおそれがあります。また、売上高を上げようと安易に値上げすることも顧客満足度に影響します。いずれの場合も、顧客の足が遠のく要因となる可能性があり、そうなれば売上・利益ともに減少してしまいます。
確実に利益につなげるには、料理・サービスの質を担保したうえで、適正な原価率として、30%前後を目安に抑えることが大切です。
原価率と関連して意識しておきたい指標
原価率の適正化を考える際には、以下の指標についても理解しておきたいところです。
- 食品ロス率=食品廃棄量÷食品使用量×100
外食産業で生じる食品ロス率は、食べ残し量を食品使用量(提供量)で除して百分率で表します。
仕入のミスや調理のミスなど、飲食店側の事情で発生した食品ロスは、本来売上に貢献するはずの食材が使われることなく廃棄されたということで、飲食店側の損失になります。
飲食店の原価にはこの食品ロス分も含まれるため、食品ロスをいかに少なくするかが原価率の適性化に重要となります。
SDGsの視点から、食品ロス削減は世界的に取り組むべき課題となっています。日本でも、「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称:食品ロス削減推進法)が2019年10月1日に施行されました。
社会の構成員として重大な社会課題に積極的に取り組む企業姿勢を見せるためにも、発生理由にかかわらず、食品ロスの削減に努めることは大切です。
食品ロスについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
「食材廃棄を減らすためには?利益向上とSDGsに向けて食品ロス対策に取り組もう」
- 歩留まり率=可食部量÷原材料(食材量)総量×100
歩留まりとは、製造業において使われる指標で、原材料の投入量に対して実際に得られた生産数量のことです。飲食店における歩留まりとは、一般的に、食材のうち使える部分、つまり可食部の割合のことを指します。野菜の芯や果物の皮、肉の筋、魚の骨など、提供する料理には使えない部分を除いた部分のことです。
歩留まり率は以下の計算式で算出します。数値が高いほど無駄がなく、利益拡大につながります。
「可食部量÷原材料(食材量)総量×100」
原価率を計算する際の原価は、食材ごとに異なる歩留まり率を考慮して算出した、歩留まり原価(原価÷歩留まり率)を用いる必要があります。
では、原価率を抑えるためにはどのようにすればよいのでしょうか? 代表的なふたつの方法をこの後紹介します。
飲食店の原価率を抑える方法1―食材のムダを減らす
飲食店の原価率を抑えるには、まずは食材のムダを減らすことがもっとも取り組みやすく、効果を上げやすい方法です。具体的には、主に「食品ロスを減らす」「歩留まりを上げる」ための工夫をします。
飲食店で食品ロスを完全になくすことは困難ですが、適切な在庫管理によってある程度減らすことは可能です。
在庫数や消費期限・賞味期限といった在庫状況を把握し、過不足のない適正な仕入れ量を決定します。その際は、来店予約状況のほか、過去のデータを分析して、曜日や天気、気温、イベントの有無などによる来店者数の変化も考慮する必要があります。また、定期的に棚卸しを実施することで、より適切な在庫管理を図ります。
ただし、食品ロスの削減は飲食店側の取り組みだけでは限界があります。
「大食漢の方向け」「小食な方向け」といったように、料理のボリュームをイメージできるような説明をメニューに記載する、ご飯の量の調節が可能なことを伝えるなど、食べ残しを減らすための働きかけも大切です。
一方、歩留まりを上げるには、可食部の多い食材を選ぶ、野菜の皮を使って一品つくる、魚の骨で出汁(だし)をとるなど、これまで廃棄していた部分を有効利用するのも効果的です。
また、食品ロスの削減や歩留まりの向上には直結しませんが、従来のものより賞味期限の長い食材を積極的に取り入れて食材のムダを減らす方法もあります。
例えば、劣化しにくく従来よりも長く使える油があります。特に揚げ物のメニューを多く提供している飲食店では、昨今の食用油の高騰は、経営状況に多かれ少なかれ影響しているのではないでしょうか? 従来の油を劣化しにくい油に変えるだけでも、油の交換頻度を減らすことができます。
食材のロスを減らす工夫については、以下の記事もぜひご覧ください。
「食材廃棄を減らすためには?利益向上とSDGsに向けて食品ロス対策に取り組もう」
飲食店の原価率を抑える方法2―メニューを見直す
前述のとおり、単純に原価の安い食材に変える、安易に値上げをするといった方法は好ましくありませんが、顧客満足度を低下させない工夫をしてメニューを見直すことは有効です。
現在のメニューを見直し、原価率の高いメニューのうち注文の少ないメニューを削除する、世界情勢などで一時的に原価が高騰しているメニューをいったん削除するといったことが考えられます。
特に、原価が高騰していて、注文が入れば入るほど利益に悪影響をおよぼすようなメニューがあれば、やはり今より安い食材に変えることも選択肢に入ってくるでしょう。その際は、単純に食材を入れ替えるのではなく、味付けを工夫する、原価の安い付け合わせを一品増やすなど、別の方法でメニューに付加価値を与えます。
メニューの値上げを検討する際は、料理より概して原価率の低いドリンクをセットにして提供するといった工夫が必要です。それにより、顧客満足度を維持したまま原価率を抑制することが可能になります。
かしこい工夫で顧客満足度を下げることなく原価率を抑えよう
飲食店に限りませんが、利益をできる限り大きくするためにも、最大限原価率を抑えたいところです。一方で、原価率を無理に抑えようとすると、提供するサービスに影響がおよび、顧客満足度の低下や、顧客離れが起きるおそれもあります。そうなると、利益が大きくなるどころか経営危機に陥りかねません。
これを避けるため、まずは飲食店における適切な原価率を把握する必要があります。
そのうえで、顧客満足度を下げないために、食材のムダをなくす、メニューを見直すといった工夫をして、上手に原価率を適正化していくことが大切です。
なお、最近では技術の進歩により、長持ちする食材も市場に提供されています。例えば、従来の油より劣化しにくい油などがあります。詳しくは以下のページよりご覧いただけます。原価率適正化のひとつの選択肢として、ぜひご検討ください。
「日清スーパー長持ち油」へ
油の劣化とはどういったものか、劣化しにくい油とは何か、従来の油との違いについて知りたい方は、「油の劣化とはどういう状態?見分け方や正しい管理方法についてわかりやすく解説」をご参照ください。
また、飲食店の経費について詳しく知りたい方は、「飲食店のFLコストとは?FL比率の適正値やコントロール方法などを解説」「飲食店の利益率の目安は?上がらない要因や向上の方法を解説」をご覧ください。