適正な発注点とは?飲食店における意義と決め方・課題など幅広く紹介
2023.07.26
食材を発注する際、どのような方法で発注していますでしょうか?
中には、特に何も定めず、その時々で判断し発注している飲食店もあるかもしれません。しかし、飲食店業界では、SDGsやコスト削減などの観点からも、食品ロスをできる限り出さない適切な発注が求められます。食材を発注する際の方法には、定期的に発注を行う定期発注方式と発注点を定めて定量を発注する定量発注方式(発注点方式)の、主に2種類があります。
今回は、食品ロスを削減しやすい定量発注方式(発注点方式)について、適切な発注点の決め方や課題、その対策などについてご紹介します。
目次
飲食店における主な発注方式
発注には、主に「定期発注方式」と「定量発注方式(発注点方式)」の二種類があります。
- 定期発注方式:例えば毎週水曜日、毎月15日など、定期的に発注を行う方法です。
- 定量発注方式(発注点方式):発注をかけるために基準の在庫量を定め、それを下回ったら、あらかじめ定めた量を発注する方式です。この、発注を行う基準とする在庫量が、「発注点」です。
定期発注方式では発注ごとに量を調節するため需要に沿った数量を発注できる、定量発注方式(発注点方式)では発注量が定まっているため発注ごとの手間が少ないなどのメリットがあります。
一方で定期発注方式では発注の都度在庫数の把握や需要予測が必要、定量発注方式(発注点方式)では適切な発注点が設定できていなければ、在庫切れや過剰在庫につながる恐れがあるといったデメリットもあります。
それぞれの特徴を理解し店舗に合った発注方法を採用することになりますが、ここでは定量発注方式(発注点方式)における発注点について考えていきます。
定量発注方式では、適切な発注点の設定が重要
適切な発注点を設定することで、在庫量と発注タイミングを適正化できます。
もし在庫が十分にあるときに発注をかけると、過剰在庫となり、コスト増大、食材の賞味期限・消費期限切れなどの問題が発生します。逆に極端に低い発注点を設定しており在庫が不足してしまうと、機会損失につながる恐れがあります。
適切な発注点を設定することは、コスト削減や機会損失回避のためのみならず、SDGsが浸透してきた社会的な流れの中で、「ものを無駄にしない」という意味でも非常に重要です。
発注点の決め方と運用方法
発注点は基本的に「1日の平均使用量×発注リードタイム+安全在庫」で算出します。
一般的な流れを、飲食店に当てはめて紹介します。
- 1日の平均使用量の把握
店舗で使用する食材について、1日でどれくらいの在庫を使っているかを把握します。
使用量やコストを削減することができないかということを点検しておくこともおすすめです。特に使用量の多いフライ油の点検には「価格高騰に負けない!業務用食用油の節約術を解説」もご参照ください。 - 発注リードタイムの把握
発注してから商品が到着するまでの日数についてデータを集め、食材ごとの発注リードタイムを算出します。納期遅れや物流の遅延も考慮します。 - 安全在庫の設定 最低限の在庫にプラスする安全在庫を設定します。安全在庫を設定することで、ある程度の需要変化に対応でき、在庫切れや過剰在庫を防ぐ効果が期待できます。
- 発注点の決定
1と2で把握した「1日の平均出荷量」「発注リードタイム」と3で設定した「安全在庫」から発注点を出します。 - 記録と調整
発注点を下回れば発注を行います。発注点による在庫量が適正か、在庫量と需要変化の記録を取りながら管理します。必要に応じて発注点を調整します。
一般的には以上のような流れで発注点を管理していきます。在庫不足・過剰在庫となる場合は最適化しながら、需要変化に合わせて調整していく形です。
定量発注方式を導入するメリット
定量発注方式を設定することで次のようなメリットがあります。
在庫の適正化
最低限必要な食材に安全在庫を加えた適切な発注点を基準にして管理することで、手間なく在庫の適正化が図れます。ある程度、過剰な仕入や食材切れを防ぐことが期待できます。
食品ロス削減
食材の在庫量に応じてこまめに発注することで、過剰仕入れが発生せずに食材が余ることも防げます。これは食品ロスの削減に直結します。
コストを抑え利益を向上するためにも、社会的な流れであるSDGsに向けて積極的な姿勢を見せるためにも、食品ロス削減は重要です。
食品ロスについて詳しくは、「食材廃棄を減らすためには?利益向上とSDGsに向けて食品ロス対策に取り組もう」をご覧ください。
また、ご飯のロスへの対策をお考えの場合は、「ご飯がパサパサになる原因と対策―ご飯のおいしさを維持するためには」や「炊飯油でおいしさをキープ!上手に選んで効率アップを実現」が参考になります。
発注作業の属人化及びミス防止
発注点と発注量を設定することで発注作業を定型化でき、発注作業の属人化防止につながります。発注を担当する人がその場で判断しなければならない部分を減らすことができるため、人為的ミス防止にも寄与します。
時間の使い方を改善
発注作業が定型化され発注量を考える手間や時間が減ることで、他の業務にかける時間を増やすことができます。
例えば、新メニュー開発や既存メニューの改良など、新規客の獲得、既存客のリピート率向上などを目指すための対策にリソースを割くことができます。
飲食店のメニュー開発については、
「飲食店のメニュー開発を成功させるには?ポイントや失敗しないための注意点を解説」
「ちょい足しでバリエーション豊富なメニュー作り!既存商品に新たな発見を」
「原価率の低いメニューとは?メニュー例と検討する際の注意点も紹介」
などの記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
また、宣伝に力を入れたり、従業員の勤務時間を見直したりといった改善も可能です。
「飲食店の人件費の目安は?トラブルを回避しながらコストを抑えよう」もご参照ください。
飲食店の発注点に関連して生じる課題と対策
発注点の設定により、次のような課題が生じる場合があります。対策もあわせて紹介します。
需要の変化に対応できない
発注点によって食材の発注を定型化することができますが、流行や季節の移り変わりによって需要が変化した場合に、必要数との誤差が生じることがあります。
この場合、適正在庫を維持できなくなり、食材切れや過剰在庫を招くことになります。
こういった需要変化による誤差を防ぐために、発注点の定期的な見直しが必要になるほか、需要が増えるとわかっているタイミングには担当者が発注量を調整する作業が必要となります。
食材が常に余ってしまう
発注点の設定は適正在庫を保つことを目的としていますが、常に食材が余ってしまい食品ロスが常態化している例もあります。
これは、最低限必要な食材の在庫に加え、安全在庫として設定した量がそもそも多すぎる場合に起こる問題です。
在庫の量と減少ペースのデータを取り直し、安全在庫をどのレベルに設定するか、見直しが必要です。
大量受注に対応しにくくなる
大口の受注や団体の予約が入った場合、定型化された発注量では対応できない場合があります。だからといって、大きな売上のチャンスとなるせっかくの大量受注を断るのは、獲得できるはずの売上を失うことになります。こういった大量受注にも対応できる体制を整えておくことは、売上確保につながります。
基本的に、発注点で管理している場合には、すでに発注量が通常営業時に適正化されているため余剰の在庫は多くありません。そのため、大口受注の際には臨時的に発注量を増やすことになりますが、仕入先も急な対応が難しいこともあります。
大量受注の際の注文期限を設定しておく、仕入れやすい食材を利用した特別メニューを設定しておく、仕入れについての幅広い協力体制を構築しておくなど、柔軟かつ迅速な対応ができる体制を整えておくことが重要です。
適切な発注点の設定は、飲食店の課題であるコスト削減や食品ロス削減にもつながる
今回は、定量発注方式の「発注点」について、知っておきたい基本的な知識を紹介しました。
定量発注方式で適切な発注点を設定し、食材在庫を最適化することは、余計に抱える在庫を減らし、食材の賞味期限切れやロスを減らすことにつながります。ただし発注点の設定を誤ると、在庫切れや過剰在庫につながり、お客さまの注文に応えられない、コストが増大する、食品ロスにつながるなど、さまざまな問題が発生します。
中でも食品ロス削減は、飲食業界における重要な課題です。
定量発注方式を採用している場合は、常に在庫の適正化ができるよう適切な発注点を設定し、状況に合わせて適宜見直していくことも大切です。