飲食店経営が難しい理由は?経営を成功させるためのノウハウも解説
2023.06.08
競合が多くひしめく中、できる限りの対策はしているけど、「思うように集客につながらない」「売上の伸びがいまひとつ」など、飲食店経営に頭を悩ませている方は少なくないでしょう。生き残っていくにはどうすればよいか、本記事では飲食店の経営が難しいとされる理由と、経営を成功させるために知っておきたいノウハウを解説します。
目次
飲食店経営は本当に難しい?
飲食店の経営は難しいとよく言われますが、それは本当でしょうか? 次のデータから考えてみましょう。中小企業庁が公表している「2022年版 中小企業白書」の業種別開廃業率のデータでは、下記グラフのように開業率・廃業率ともに「宿泊業、飲食サービス業」が最も高い割合になっています。
しかも、開業率2位の「生活関連サービス業、 娯楽業」が7.6%、3位の「電気・ガス・熱供給・水道業」が6.3%のところを「宿泊業、飲食サービス業」は17.0%。廃業率2位の「生活関連サービス業 、娯楽業」4.5%、3位「金融業、保険業」4.0%のところを「宿泊業、飲食サービス業」は5.6%と、突出した高さです。
引用:2022年版「中小企業白書」 第2節 中小企業・小規模事業者の現状|中小企業庁
宿泊業も含まれてのデータですが、飲食サービス業は、開業率も廃業率も高い業界であるといえます。飲食店経営に参入する法人や事業主は多いものの、開店後の経営を維持することが難しいことがわかります。
外食需要や訪日外国人観光客数が順調に回復しつつある昨今、追い風に乗るためにも、下記のポイントをご参考ください。
飲食店経営が難しい理由とは?
まず、飲食店の経営が難しい理由とは、一体何なのでしょうか?
開業時に多額のコストがかかること
飲食店を開くには多額のコストが必要です。まずは物件を借りて店内の内装工事を行い、家具を入れてレイアウトしなければなりません。また、厨房を作る際は保健所の検査に合格しなければならず、そのために必要な衛生面、明るさ、スペース、設備などを確保する必要があります。そういった費用をはじめ、調理器具や備品など、トータルで数百万円から数千万円かかってきます。多額のコストを回収し、さらに十分な利益を上げるのは容易なことではありません。
毎月の経費削減が容易ではないため
飲食店では食材費と人件費を合わせたFLコストが経費の多くを占めます。利益率を上げるには経費の削減が有効な手段ですが、安易なFLコストの削減は料理やサービスの質の低下につながる恐れがあるためむやみにはできません。また、今回のコロナ禍のように一時的に需要が落ち込んでいる時期にも、家賃は毎月同じように発生します。
以上のように、飲食店では毎月の経費の削減が難しいため、何らかの理由で売り上げが大きく下がると、一気に赤字になり、倒産してしまうケースがあります。
FLコストについて詳しくは「飲食店のFLコストとは?FL比率の適正値やコントロール方法などを解説」をご覧ください。
売上が外的要因によって変動しやすいこと
飲食店は外的要因の影響を受けやすい業種です。
雨が降ったり急激に寒くなったりと天気によって客足が激減する店舗もあり、流行によって客足が一気に増減することもあります。テレビや雑誌、SNSなど各種メディアで店舗が話題になり、連日行列ができるほどの人気店になったものの、しばらくすると客足が減り、空席が目立つようになるというケースも珍しくありません。
競合店舗が多いこと
食品衛生責任者が1店舗に1名いれば飲食店を開業することができます。食品衛生責任者の資格は1日講習を受講することで取得可能です。以上のことから、非常に参入障壁の低い業界で、競合が多くなりがちです。
また、ライバルは同じ飲食店だけとは限りません。中食の一般化やイートインスペースの設置の増加などから、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなども競合となり得ます。
このように多くの競合がひしめく環境下で打ち勝つのは、やはり容易ではありません。
人気につながる要素が多様であること
飲食店はおいしい料理さえ出せば、価格さえ安ければ、店内をおしゃれにさえすれば、必ず人気店になるというわけではありません。人気につながる要素が多様であり、かつ変化していきます。それを常に的確にとらえることは、非常に困難です。
飲食店経営を成功させる方法を解説
では、どうすれば飲食店経営を成功させることができるのでしょうか。考えられる方法をいくつか紹介します。
ターゲットを絞り込む
前述のように人気につながる要素が多様ななか、ターゲットを広げすぎると、お店のコンセプトが、ぼやけたものとなってしまいがちです。ここは欲張らずに、ターゲットを絞り込むことが大切。若い女性、会社員、ファミリー層、高齢者などまずはターゲットを明確にし、内装やレイアウト、メニュー、集客方法など、ターゲットに応じた戦略を立てていくことでリピーターの獲得に成功し、安定経営につながっていきます。
成功するメニュー開発のポイントについては、「飲食店のメニュー開発を成功させるには?ポイントや失敗しないための注意点を解説」をご覧ください。
FL比率を用いてコストを適正化する
FL比率とは、売上に対するFLコスト(食材費+人件費)の割合のことです。他の条件が同じであればこの数値が低いほど利益が多くなり安定経営につながります。そのため可能な限り抑えたいところですが、それがサービスや料理の質の低下や労働条件の悪化につながれば、お客さまの足が遠のいたり従業員の離職につながったりする恐れがあります。
お客さまの満足度に悪影響を及ぼさないよう、食品ロスの削減やあまり出ないメニューの見直し、オペレーションの効率化などサービスの質を下げない工夫によってFL比率の適正化を図ることが必要です。飲食店の適正なFL比率は60%以下と言われ、55%以下であれば良好と言われます。このあたりの割合を目安に適正化を図っていきましょう。
回転率のアップ
飲食店の回転率とは、ある一定の期間や時間において、客席を何人のお客さまが使ったかの指標。1日における回転率を出すケースが一般的ですが、その場合は、1日の来店者数÷客席数で算出します。
この数値から限られた客席がどの程度効率良く使われているかがわかり、FL比率と同様経営状態のバロメーターになります。顧客単価が同程度であれば、回転率がアップするほど売り上げもアップします。そのため、回転率アップの施策を講じることも飲食店の安定経営のためには有効です。
飲食店の回転率をアップさせる方法には、以下のようなことが考えられます。
- 注文用端末・キャッシュレス決済を導入するなどし、オペレーションの効率化を図る
- 料理の事前の仕込みをしっかり行う・ドリンク類をセルフサービスにするなどで、調理の効率化やメニューの提供時間短縮などを行う
- テレビ・雑誌や新聞を置かないなどをし、お客さまが長居しにくい環境を作る
調理の効率化について詳しくは、「調理効率化のポイントは?飲食店経営の安定化を図るために考えるべきこと」をご覧ください。
ただし、業態によって回転率のとらえ方は異なります。
例えば、客単価の低い居酒屋チェーン店で回転率を上げるために、ドリンクをセルフサービスにすることは問題ありません。しかし高級レストランでドリンクをセルフサービスにしてしまっては、不満につながってしまいます。
業態に合ったサービスの質を担保したうえで、回転率の適正化を図っていくことが大切です。
回転率について詳しくは、「飲食店の回転率向上で売上アップ!改善のノウハウや具体例を紹介」をご覧ください。
競合店舗の調査
数多くある競合店舗と差別化を図り生き残っていくためには、まずは競合を知ることが重要です。競合店舗に足を運び、店舗の雰囲気や接客態度、メニューなどを調査し、良いところ悪いところを分析します。特に人気のある店舗には、他と明らかに違う魅力があるはずです。それが何なのかを観察し、自社に取り入れられそうなところがあれば取り入れていきます。
競合を分析した結果をもとに、メニューの工夫、サービスやイベントの企画など、競合に打ち勝つための戦略を練っていきましょう。
多角的な視点で工夫し、飲食店の経営を成功させよう!
飲食店の経営は難しいと言われますが、当然成功している店舗もあります。中には「正直うちより魅力あるメニューとは思えない」「あんなに高い値段を設定しているのに」といった店舗が、人気である場合もあるでしょう。
それらの店舗は、その他の面で需要を的確にとらえることができているのかもしれません。ぜひメニューや値段だけではなく明確なコンセプト、ターゲットに合った店舗の雰囲気づくり、SNSを駆使した集客など広い視野でターゲットの心に響く工夫をし、飲食店経営を軌道に乗せていってください。なお、ここでは利益率やFL比率といった飲食店経営の指標になるものを紹介しましたが、飲食店経営の重要な指標として「原価率」もあります。原価率については、「飲食店の原価率とは?計算方法や抑える方法を解説」をご覧ください。
原価率については、「飲食店の原価率とは?計算方法や抑える方法を解説」や、「原価率の低いメニューとは?メニュー例と検討する際の注意点も紹介」をご覧ください。