飲食店の食材コストはまだまだ改善できる!削減法11選
2024.04.09
コロナ禍の影響からようやく抜けつつあるなか、エネルギーや食材などあらゆる物価の高騰により、飲食店経営は再び厳しい状況に置かれています。利益率を高めるためには業務効率を上げるとともに、コストの見直しを図る必要があります。今回はコスト削減効果に直結する「仕入れ」についてスポットを当て、改善に結びつくコツや見直しの具体的な方法を解説します。
目次
在庫管理と発注の適正化
コスト削減につながる在庫管理と発注の適正化のための手法には、以下のようなものがあります。
発注数の適正化
発注担当者の明確化や食材の種類、取引先、単価、年間数量など過去の取引内容を整理し、過剰発注や重複発注などがないかを確認することで、ムダをなくしコストを下げられます。過去の発注履歴や直近の発注内容などのデータから適正な発注内容を予測し、必要なものを必要なときに必要なだけ発注できるよう、チェック体制を整えます。
一括大量仕入れ
食材をまとめて大量仕入れを検討することで、仕入れ単価を下げ、コストが削減できることもあります。また、輸送コストや作業コスト(発注や受入など)を抑えられます。一方で大量に仕入れすぎると保管場所を取りすぎることに注意が必要です。
在庫管理とロス削減
過去の廃棄状況や売り上げデータの分析を通じて、各食材の最適な保存期間や保存量を見定めます。先入れ先出しの原則を徹底し、在庫の回転を確保することで廃棄を出さないよう管理を行います。在庫量と各食材の使用期日を可視化し、期日の近いものを使いきれるメニューを加えるなどの工夫も必要です。
その他食材ロス削減の方法については、「食材廃棄を減らすためには?利益向上とSDGsに向けて食品ロス対策に取り組もう」をご覧ください。
食材の見直し
食材の見直しによるコスト削減方法には、以下のような方法があります。
長期常温保存できる食材の利用
長期常温保存できる食材であれば、廃棄リスクを減らしながら、大量発注により単位当たりのコスト低減が可能です。
長期保存が可能な具体的な食材としては、乾物、缶詰、レトルト食品、瓶詰食品などがあります。自店のメニューの特性に合わせた選択が求められます。
冷凍食品の活用
冷凍食品は生鮮食材に比べて価格が安く、長く保存できます。また調理済みのものも多く、調理の負担を軽減するのにも役立ちます。
ただし、冷凍食品は解凍時に品質が劣化する可能性があるため、使用方法やタイミングには注意が必要です。また、冷凍庫の開閉に伴う温度変化による保存中の「冷凍焼け」を防ぐために、適切に温度管理をする配慮も必要です。
地域産品の活用
地域で生産される食材や調味料を採用することで、輸送コストを削減できます。地元の生産者や卸売業者と提携すれば、良質でコスト効果の高い食材が入手でき、メニュー品質の向上と同時にコスト軽減が実現します。
旬の食材を積極的に採用する
旬の食材は、新鮮で比較的安く調達できることが魅力です。オンシーズンならではのメニュー開発により、味のバリエーションも広がります。商品の目玉としながら、コストを抑えられます。
置き換え・併用の検討
これまで検討することなく習慣的に利用している食材を、よりコストを抑えやすいものに置き換えたり、複数の食材を併用したりできないか検討することで、コスト削減効果のヒントが得られます。
例えば、どのジャンルの飲食店でも使う油については、置き換え・併用でコスト削減を図ることができます。
<油の置き換え・併用の例>
揚げ物メニューの多い飲食店では、酸価上昇を抑えられる油を使う
酸価上昇が抑えられるため、これまでの揚げ油よりも長く使用が可能です。また、揚げ油のにおいが抑制され、サクッとした食感が持続します。特に油の消費が多い店舗では、大幅なコスト削減につながります。
酸価上昇を抑えられる油については、以下のサイトをご覧ください。
ごま油やオリーブオイルなど高価な油を節約するためにほかの油と併用する
ごま油やオリーブオイルは単価が高いため、単独で使用すると原価率が上がってしまいます。しかし、料理の風味(品質)を保てる範囲でほかの油と混ぜて使用することで、コストを抑えながら満足度の高い料理を作ることができます。
風味が生きたブレンドオイルの利用は、メニューの魅力を保ちながらおいしさを損なうことなく自慢の味を提供するのに役立ちます。
コスト軽減につながるオイルについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「焙煎ごま油の風味を飲食店の調理に活用する方法-種類の違いやメリットを解説」
「調合ごま油・ごま油低配合のブレンドオイルの実力は?油の見直しでコスト改善」
メニューの見直し
メニューの見直しによるコスト軽減策としては、以下のような方法があります。
量の調整
メニューの量を調整することで、食材の使用量を減らし、原価を抑えられるようになります。
例えば、食べ残しが頻繁にあるメニューについては、ご飯や麺の量を減らす、おかずの量を調整するなどの見直しが必要です。
大盛・小盛や副菜の数を変えるなど、お客さまに量を選んでいただき、サイズや量によって料金を調整する方法もあります。食材ロスを減らすのに加え、社会的な貢献への姿勢を示せるというメリットがあります。
メニュー全体で原価のバランスをとる
原価が高く満足度の高いメニューと、原価が安く利益を取れるメニューとのバランスを見ながら調整することも大切です。
単純に考えれば、原価の安いものの割合を増やし、原価の高いメニューの割合を減らせば、コスト削減には効果が高いように思えます。
しかしそれによりお客さまの満足度が下がってしまうと、客足が遠のくリスクがあります。
原価が高くても人気のあるメニューは残す、原価の安いメニューは、サイドメニューやドリンクとセットにして、お得感を維持しつつ価格を上げるなど、お客さまの満足度が下がらない工夫が必要となります。
目の前の利益ばかりを優先するのではなく、いかに店としての魅力を維持しながらコスト削減ができるかを考えなければなりません。
原価率の低いメニューや考える際に留意したいポイントについては、「原価率の低いメニューとは?メニュー例と検討する際の注意点も紹介」をご覧ください
レシピ遵守の徹底
地味ではありますが、レシピを遵守することも意外にコスト削減効果が高いものです。
勘や経験に頼っていると、調理する人によりばらつきが出る可能性があります。調味料の使い方に差があったり、食材の量が一定していなかったりすると、日々の業務が重なるうちに、消費する食材の量にも、料理の品質にも大きく違いが出てしまうことがあり得ます。
目分量にせず消費量を均一にすることで、ムダをなくし、常に安定した味を提供することができます。作業効率を確保しながらレシピを遵守するためには、料理のプロセスや調理メソッドを見直し、正確な計量や効果的な使用方法を検討することが求められます。
飲食店のコスト改善は仕入れの現状把握と見直しから
食材や物価の高騰で、飲食店のコスト改善は喫緊の課題となっています。経営を安定継続させるためには、業務効率だけではなく、実際にかかる経費を削減しなければなりません。飲食店の経費削減で真っ先に考慮したいのが、食材にかかるコストの削減です。
今回紹介した方法を参考に、お客さまの満足度を下げずに食材のコストを抑えていく工夫が求められます。