【飲食店必見】グリストラップの正しい清掃方法・頻度・清掃の重要性
公開日:2023.06.08
更新日:2025.09.29

グリストラップとは、排水中に含まれる油やゴミが下水に流れないよう止める装置のことです。グリストラッグリストラップとは、排水中に含まれる油やゴミが下水に流れないよう止める装置のことです。地域の条例で設置が義務化されているケースもあり、設置している飲食店も多いことでしょう。
しかし、正しい清掃方法を知らずにいると、悪臭や詰まりの原因となったり、清掃コストがかさんだりする可能性があります。今回は、グリストラップの正しい清掃方法や、廃棄物の処理方法、清掃を怠るリスクまで詳しく解説します。
目次
グリストラップの清掃方法
グリストラップとはそもそも何か、また、その仕組みと清掃方法を解説します。
グリストラップとは
グリストラップとは、地域によっては業務用厨房の排水処理に設置が義務づけられている阻集器のことです。油やゴミといった廃棄物が下水に流れ込むのを防止するフィルターの役割を持ち、設置することで環境への影響を軽減できます。また、店舗清掃の際の負担を減らすことにもつながります。
グリストラップは基本的に3つの槽で構成されており、段階的なろ過が行われる仕組みとなっています。
- 第1槽
バスケット状で野菜くずなどの大きなゴミを回収します。
- 第2槽
水と油を分離させ、第3槽に油分が少ない水を送るための槽です。
残りはさらに次の槽へ流れていきます。
- 第3槽
第2槽で取り切れず残った油分を取り除くための槽です。
ろ過されて油分が減少した排水を、「トラップ管」を通して下水道に流すことで、環境への影響を極力回避することが可能です。
グリストラップには日々廃棄物がたまるため、それらをしっかりと取り除くことが重要です。
グリストラップの正しい清掃方法は?
グリストラップの清掃は専門業者に依頼する場合もありますが、日々の手入れは店舗で行うことになります。
グリストラップの一般的な清掃の流れを解説します。
- ①第1槽のゴミを捨てる
第1槽のバスケットには、残飯や食べかすなどのゴミが多くたまるため、毎日の清掃が必要です。終業後にゴミを取り除いて、害虫・害獣の発生を予防します。こまめに清掃することは、腐敗臭の予防にもなります。
バスケットに網をかぶせておくと、細かなゴミを流さず、廃棄も楽になるのでおすすめです。
- ②第2槽に浮いている油をすくいとり、沈殿物を処理する
第2槽では水から分離して浮かび上がる油を、ひしゃくなどで取り除きます。油がたまったままだと、排水のろ過が十分にされない、排水管が詰まるなどのリスクがあるため、定期的に行います。
特に中華料理店やラーメン店など、油を多く使用する業態では毎日の手入れが必要です。
また第2槽の底には沈殿物として、汚泥がたまります。2~3日に1回から週に1回程度の清掃が必要です。
- ③第3槽のトラップ管の清掃
排水管であるトラップ管を掃除します。油分がこびりついてぬめりが発生するため、トラップ管の掃除は、2~3か月に1回程度の頻度で行います。
部分清掃では落とせない汚れが残っている可能性があるため、定期的に時間をかけた全体清掃が必要となります。
定期的に全体清掃を行うことで、詰まりや破損などにつながる重篤な汚れの蓄積を防止できます。汚れがひどくなると、専門業者でなければ汚れを落とせなくなったり、グリストラップが機能しなくなるおそれもあります。
配管掃除の手順は、ふたが付いている場合はふたを取り外した後、排水口をふさぎ、柄の長いブラシを使って汚れを落としていきます。
グリストラップから回収した油や汚泥の処理方法
グリストラップを清掃した後の、廃棄物の処理について解説します。
グリストラップの清掃で出るゴミは廃棄物処理法に基づき適切に処理することが義務付けられています。
- 第1槽のバスケットのゴミ
「事業系一般廃棄物」として処理します。 - 第2槽以降にたまる油や汚泥
「産業廃棄物」として、法令に従った処理が必要です。
清掃後は廃棄物を容器に入れて保管し、産業廃棄物処理の認可を受けた業者に処理を依頼します。
産業廃棄物の不法投棄はもちろんですが、油や汚泥処理の許可がない産業廃棄物処理業者に委託した場合も罰則を科せられます。委託する前に、先方の許可業務内容を十分に確認することが重要です。
清掃頻度の目安
グリストラップの清掃頻度は、各槽の役割や汚れのたまり具合によって異なります。店舗の業態や油の使用量に応じて、適切な清掃スケジュールを組むことが重要です。
- 第1槽:毎日(すべての業態で共通)
- 第2槽:毎日~週1回(特に油を多く使う中華料理店やラーメン店は毎日清掃がおすすめ)
- 第3槽:2~3ヶ月に1回
上記はあくまで目安ですので、店舗の状況に合わせて調整するとよいでしょう。
グリストラップ清掃を怠ると発生する経営リスク
グリストラップの清掃を怠ると、店舗経営に深刻な影響を及ぼすさまざまなリスクが発生します。

悪臭・害虫による顧客離れリスク
グリストラップの清掃を怠ると、腐敗した食材残渣や油脂によって強烈な悪臭が発生します。この臭いは厨房内だけでなく、客席にまで広がり、お客様の食事体験を著しく損ないます。
さらに、汚れた環境はゴキブリやハエなどの害虫を引き寄せる原因にもなります。害虫の発生は衛生管理に対する不信を招き、SNSでの悪評拡散や口コミサイトでの低評価につながる恐れがあります。
一度失った顧客の信頼を回復するには、多大な時間とコストが必要になります。
配管詰まりによる営業停止リスク
清掃を怠り続けると、油脂や汚泥が配管内に蓄積・固着し、排水を遮ってしまうことがあります。配管の詰まりが深刻化すると、厨房での洗い物ができなくなり、営業継続が困難になります。
修復には専門業者による大掛かりな清掃が必要となり、修理費用の負担や営業時間への影響が想定されます。
法的責任と近隣トラブルリスク
グリストラップの管理不備は、思わぬ法的リスクにつながることがあります。
- 下水道(自治体条例):油脂が下水に流出すると、各自治体の下水道条例に基づく排水基準に違反するおそれがあり、自治体から改善命令などの行政指導や行政処分の対象となる場合があります。
- 食品衛生法:衛生管理の不備が重大・継続的と判断された場合、保健所による営業停止や許可取消処分の対象になることもあります。
- 民事責任:配管詰まりの影響が近隣店舗にまで及んだ場合、損害賠償請求を受ける可能性もあります。
こうした事態を防ぐためにも、日常的な点検や清掃を行い、法令や周囲との良好な関係を維持することが大切です。
グリストラップの設置義務と事業者の責務
このようなリスクがあるグリストラップですが、必ず設置しなければならないのでしょうか。
全国一律で義務を定めた法律があるわけではありませんが、実務上は下水道法に基づく各自治体の下水道条例や排水設備技術基準により、飲食店など油脂を含む排水を出す施設にはグリストラップの設置が原則求められます。
例えば東京都では、東京都下水道条例により、油脂等を含む排水を伴う施設にグリストラップの設置が原則必要とされています。共用設備で同等機能が確保されている商業施設等、条件により適用の仕方が異なる場合があるため、所管の上下水道局や保健所などで、守るべきルールを確認しましょう。
地域の決まりに合わないままグリストラップの設置や管理を怠ると、油や汚泥が流出して地域や顧客からの信頼を損ねるおそれがあります。事業者の責務として、適切な設備の設置とメンテナンス(点検・清掃・記録)を計画的に実施しましょう。
グリストラップ清掃に関するコスト最適化
一方で、グリストラップ清掃や油や汚泥の廃棄にかかるコストも無視できません。グリストラップに関するコスト最適化にはいくつかの方法が考えられます。
清掃作業の効率化で人件費を削減する
グリストラップ清掃は、現場の従業員が日常的に行う業務であるため、作業効率の改善が直接的な人件費削減につながります。
作業手順のマニュアル化
清掃フローを明確にすることで、無駄な動きを省き、作業時間を短縮できます。
専用ツールや使い捨てネットの活用
バスケット部分に使い捨てネットや細目のカゴを設置することで、ゴミ処理が容易になり、清掃の負担を軽減できます。
作業分担やローテーション制の導入
作業を特定の担当者に任せきりにせず、分担やローテーションを取り入れることで、属人化を防止し、組織全体の効率化につながります。とくにグリストラップ清掃のように負担の大きい作業は、一人に集中すると疲労やモチベーション低下を招き、作業品質にも悪影響を及ぼしかねません。
こうした小さな改善の積み重ねが、長期的には大きなコスト削減効果を生み出します。
廃棄物処理コストの見直し
グリストラップから出る廃棄物(ゴミ・油・汚泥)は、法令に従って適切に処理する必要がありますが、処理にかかるコストについては見直しの余地があります。
複数の処理業者で見積もりを取得
廃棄物処理費用は、地域や業者によって差が大きいため、比較検討によりコストダウンが可能です。
油を長持ちさせて廃油を減らす
油の使用量や廃油回数を減らすことは、廃棄時に油が漏れてグリストラップに流れ込むリスクを抑えることにつながります。油を大事に使い切る工夫として、以下の取り組みが効果的です。
食材の水気を取り除く
余分な水分は油の劣化を早めるため、調理前にしっかり水気を拭き取ります。
揚げカスを取り除く
揚げ物をすると揚げカスが残ります。油を劣化させる一因となるので、こまめにすくい取るようにします。
油の種類を見直す
長持ちタイプの油を活用すれば、交換頻度を減らし、コストと廃棄量を同時に削減できます。
詳しくは「価格高騰に負けない!業務用食用油の節約術を解説」もぜひご覧ください。
グリストラップ清掃は飲食店の重要な仕事
日々の業務に追われていると、グリストラップの清掃が面倒に感じるかもしれません。しかし、グリストラップの清掃を怠ると、排水の詰まりや悪臭発生の原因となり、営業に支障をきたすおそれがあります。自治体のガイドラインを確認し、正しく処理しなければなりません。
一方で、グリストラップの清掃に伴い発生するコストが気になる人も多いでしょう。なかでも、油を多く使う業態の飲食店では、グリストラップの清掃以外にも、油の廃棄にかかるコストも大きくなりがちです。
油の廃棄にかかるコストの削減には、第一に油の廃棄頻度を減らすことが考えられます。しかし、そのために料理の質や安全性に影響が出るようなことは絶対に避けなければなりません。
そのようなときは、油そのものを切り替えることも一案です。劣化しにくく長持ちする機能を持つ油を利用することで、油の質を担保しながら廃棄頻度を低減することが可能になります。ぜひ一度、油の見直しをしてみてはいかがでしょうか?
「日清スーパー長持ち油」へ
なお、油の廃棄にかかるコストについては、以下の記事をご参照ください。
「油の廃棄の正しい処理方法とコスト削減について解説」