グリストラップの正しい清掃方法と注意するポイントを解説
2023.06.08
グリストラップとは、排水中に含まれる油やゴミが下水に流れないよう止める装置のことです。グリストラップの設置は法律で明確には定められていませんが、地域の条例で義務化しているケースがあり、設置している飲食店も多いことでしょう。
今回は、グリストラップの仕組みや清掃の方法、実施の際の注意点について解説します。
目次
グリストラップの清掃方法
グリストラップとはそもそも何か、また、その仕組みと清掃方法を解説します。
グリストラップとは
グリストラップとは、地域によっては業務用厨房の排水処理に設置が義務づけられている阻集器のことです。油やゴミといった廃棄物が下水に流れ込むのを防止するフィルターの役割を持ち、設置することで環境への影響を軽減できます。また、店舗清掃の際の負担を減らすことにもつながります。
グリストラップは基本的に3つの槽で構成されており、段階的なろ過が行われる仕組みとなっています。
- 第1槽
バスケット状で野菜くずなどの大きなゴミを回収します。
- 第2槽
水と油を分離させ、第3槽に油分が少ない水を送るための槽です。
残りはさらに次の槽へ流れていきます。
- 第3槽
第2槽で取り切れず残った油分を取りぞくための槽です。
ろ過されて油分が減少した排水を、「トラップ管」を通して下水道に流すことで、環境への影響を極力回避することが可能です。
グリストラップには日々廃棄物がたまるため、清掃をしないでいると、悪臭や害虫・害獣の発生、配管のつまりなどの原因となります。
汚れを放置したことで店外にまで影響がおよぶと、過大な補償を請求されるおそれもあり、十分な注意が必要です。
グリストラップの正しい清掃方法は?
グリストラップの清掃は専門業者に依頼する場合もありますが、日々の手入れは店舗で行うことになります。
グリストラップの一般的な清掃の流れを解説します。
- ①第1槽のゴミを捨てる
第1槽のバスケットには、残飯や食べかすなどのゴミが多くたまるため、毎日の清掃が必要です。終業後にゴミを取り除いて、害虫・害獣の発生を予防します。こまめに清掃することは、腐敗臭の予防にもなります。
バスケットに網をかぶせておくと、細かなゴミを流さず、廃棄も楽になるのでおすすめです。
- ②第2槽に浮いている油をすくいとり、沈殿物を処理する
第2槽では水から分離して浮かび上がる油を、ひしゃくなどで取り除きます。油がたまったままだと、排水のろ過が十分にされない、排水管が詰まるなどのリスクがあるため、定期的に行います。
特に中華料理店やラーメン店など、油を多く使用する業態では毎日の手入れが必要です。
また第2槽の底には沈殿物として、汚泥がたまります。2~3日に1回から週に1回程度の清掃が必要です。
- ③第3槽のトラップ管の清掃
排水管であるトラップ管を掃除します。油分がこびりついてぬめりが発生するため、トラップ管の掃除は、2~3か月に1回程度の頻度で行います。
部分清掃では落とせない汚れが残っている可能性があるため、定期的に時間をかけた全体清掃が必要となります。
定期的に全体清掃を行うことで、詰まりや破損などにつながる重篤な汚れの蓄積を防止できます。汚れがひどくなると、専門業者でなければ汚れを落とせなくなったり、グリストラップが機能しなくなるおそれもあります。
配管掃除の手順は、ふたが付いている場合はふたを取り外した後、排水口をふさぎ、柄の長いブラシを使って汚れを落としていきます。
グリストラップ清掃に関する注意点
グリストラップを清掃する際には、次のような点に注意が必要です。
自治体のガイドラインを確認
グリストラップの清掃は、自治体のガイドラインに沿って実施することが求められます。
ガイドラインでは一般的に、グリストラップの清掃の仕方、清掃頻度の目安、油分や汚泥の処理方法、グリストラップ清掃の注意点などが定められています。
自治体によっては、設置義務や扱いに厳しい基準を設けている場合もあります。店舗が立地する地域の自治体のガイドラインをしっかりと確認し、適正な対応をしていかなければなりません。
部品の取り扱い
グリストラップの清掃時には、部品を破損しないよう正しく扱うことが重要です。一部でも破損してしまうと、グリストラップが正常に機能しなくなります。廃棄物、排水の処理が正しくできなくなると、店舗の営業可否にも影響がおよびます。部品の取り外し・取り付けの際には、注意して特に丁寧に扱わなければいけません。
使用する洗剤
グリストラップの清掃では大量の水を流します。
洗浄力の強さだけで選ぶと、グリストラップを傷めたり、環境破壊の危険が生じたりする可能性も考えられます。専用の洗剤や、天然成分の重曹など環境に配慮している洗剤を使うようにしましょう。
グリストラップから回収した油や汚泥の処理方法
グリストラップを清掃した後の、廃棄物の処理について解説します。
グリストラップからの廃棄物は2種類に分けられる
グリストラップの第1槽のバスケットのゴミは事業系一般廃棄物として、第2槽以降にたまる油や汚泥は産業廃棄物として、法令に従った処理が必要です。
清掃後は廃棄物を容器に入れて保管し、産業廃棄物処理の認可を受けた業者に処理を依頼します。
産業廃棄物の不法投棄はもちろんですが、油や汚泥処理の許可がない産業廃棄物処理業者に委託した場合も罰則を科せられます。委託する前に、先方の許可業務内容を十分に確認することが重要です。
グリストラップの設置義務
法律でグリストラップの設置義務や具体的な設置基準などが明記されているわけではありません。しかし、HACCPに沿った食品衛生管理法や、建築基準法、下水道法などに、グリストラップ設置に関連する内容があります。また、先述したように、自治体の条例で設置を義務化しているところもあります。
例えば東京都では、条例で設置義務を定めており、都内で飲食業を営む際には必ずグリストラップを設置しなければなりません。
法的な設置義務がなくとも、グリストラップの設置を怠り、産業廃棄物にあたる油や汚泥を垂れ流すようなことがあれば、店の信頼にかかわります。事業者の責務として、グリストラップの設置とメンテナンスを実施する必要があるでしょう。
グリストラップ清掃は飲食店の重要な仕事
日々の業務に追われていると、グリストラップの清掃が面倒に感じるかもしれません。しかし、グリストラップの清掃を怠ると、排水の詰まりや悪臭発生の原因となり、営業に支障をきたすおそれがあります。自治体のガイドラインを確認し、正しく処理しなければなりません。
一方で、グリストラップの清掃に伴い発生するコストが気になる人も多いでしょう。なかでも、油を多く使う業態の飲食店では、グリストラップの清掃以外にも、油の廃棄にかかるコストも大きくなりがちです。
油の廃棄にかかるコストの削減には、第一に油の廃棄頻度を減らすことが考えられます。しかし、そのために料理の質や安全性に影響が出るようなことは絶対に避けなければなりません。
そのようなときは、油そのものを切り替えることも一案です。劣化しにくく長持ちする機能を持つ油を利用することで、油の質を担保し廃棄頻度を低減することが可能になります。ぜひ一度、油の見直しをしてみてはいかがでしょうか?
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なお、油の廃棄にかかるコストについては、以下の記事をご参照ください。