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パーム油ガイド:使用用途と特長、その原料について

パーム油ガイド:使用用途と特長、その原料について

パーム油は、世界で最も多く生産されている植物油脂です。日本では2008年に大豆油を抜いて、菜種油に次ぐ第2位の供給量となっています。外食や中食、加工食品メーカーなどでは様々な植物油脂を活用していますが、その中でもパーム油はフライ油からマーガリン、ショートニングの原料など幅広い用途で利用されています。これは、パーム油には他の油脂にはない特長があるからです。ここでは、パーム油の利用方法や特長、その原料について詳しく説明します。

パーム油の用途

菜種油や大豆油が常温で液体なのに対し、パーム油は常温では固体です。しかし、分別という加工技術によって異なる物性(融点など)に分けることができます。これらの分別された油脂は、他の油脂と調合されたり、さまざまな加工技術を組み合わせることにより、フライ油、マーガリン、チョコレート、ホイップクリームなど、多岐にわたる用途で使用されます。

揚げ物 (惣菜など即食提供)

パーム油はフライ油の劣化の原因となる重合物が増加しにくく、粘度上昇が緩やかで劣化による泡立ちの発生が遅いという利点があります。

淡白な風味のパーム油は、単独で使用されるだけでなく、菜種油や大豆油などとブレンドされ使用される例も多くあります。

揚げ物 加工食品(インスタントラーメン、冷凍食品など)、菓子(ドーナツ、スナック菓子など)

パーム油は飽和脂肪酸の割合が高く、酸化安定性が良いため保存性に優れています。その特性を活かして賞味期限が長めの加工食品や菓子に使用されています。

マーガリン・ショートニング

マーガリンやショートニングの製造では、用途に合わせて様々な油脂を調合し、冷却や練り合わせ工程にて硬さを調整します。パーム油は、高い融点特性(常温にて固体)を活かして利用されます。

チョコレート(カカオ代用脂)

チョコレートの主要成分であるカカオ脂は天然産物のため高価で、融点などの物性にバラつきがあります。一方、パーム油等を原料とするカカオ代用脂(加工油脂)は、カカオ脂に比べて物性も安定し、経済的です。さらに、カカオ代用脂を使用することにより、チョコレート製品の物性調整(耐熱性の向上や耐ブルーム性の向上、口溶けの調整など)が可能です。

パーム油ならではの特長

分別という加工技術によって異なる物性(融点など)を持つ部分に分けることができます。

分別技術とは 

油脂の主成分はトリアシルグリセロール分子ですが、油脂の中には融点の異なる様々な種類が存在しています。分別技術はトリアシルグリセロール分子の融点の違いを利用して分ける技術を指します。分別後、融点の高い固体部分をステアリン部、融点の低い液体部分をオレイン部と呼びます。

目的の物性(融点など)を持つ部分を得るために、分別を複数回行う場合もあります。

〈分別例〉

パーム油の分別技術

パームの果実を搾ることにより採れるパーム油は、融点が約35℃で、常温では固体です。分別技術を用いることで、融点が約35℃のパーム油を出発点として、融点が約50℃以上から約15℃まで異なる融点を持つパーム油に分けることができます。

低融点パームオレインは常温で液体のため作業効率が良く、更に菜種油など他の液状油とブレンドすることで流動性を向上させ寒冷地でも加温することなく使用できます。

       パーム油の物性(保存温度:15℃)

白濁したパーム油、白く固まったパーム油の使い方は?
菜種油などに比べ、パーム油は融点が高いので、冬季に低温で一部沈殿、白濁、固化することがありますが、品質には問題ありません。常温で固形状のパーム油の場合は湯浴で溶かしてから均一に混ぜて使用してください。低融点パーム油の場合は使用前(1~2日前) に15℃以上のなるべく暖かい場所に保管し、均一に混ぜて使用してください。寒冷地では作業性向上のために、融点が低く固まりにくい商品が適しています。

原料 -パームヤシとは-

パーム油が世界で最も多く生産される植物油脂となった理由の一つは、その高い生産性にあります。パームヤシは熱帯地域で育つ常緑樹で、一年を通じてパーム油の原料となる実を収穫できます。これに対して菜種や大豆は一年に一度しか収穫できず単位面積当たりの収穫量が制約されます。パーム油は菜種油と比較して単位面積当たりの生産量が約8~10倍と言われています。

パーム油の主要な原産地はインドネシアとマレーシアで、2国で世界の約80%のパーム油を生産しています。

一本のパームヤシには年間を通じて約10個の果房(バンチ)が結実します。それぞれのバンチは20kg程度で、2,000~3,000個の赤い果実(約4×5cm)がついています。パームヤシの果実からは、果肉からパーム油、中心部の種子からパーム核油という2種類の油脂が採れます。果実の油分含量は44~53%です。

パームプランテーション
パーム果房(パンチ)
パームの実 
オレンジ部分:果肉 
白色部分:種子

パーム油の需給

世界全体の植物油脂生産量は約2億トンに達していますが、その中でもパーム油は最も多く生産され全体の約40%を占めています。またその生産量はここ20年間で約2倍に増加しています。

日本国内でのパーム油の供給量は2008年に大豆を抜いて2位となりました。

世界の植物油生産量

合計:約2億トン(2021/22)
パーム油:約40%、大豆油:約28%、菜種油:約12%

<出典>農林水産省「油糧生産実績調査」、財務省「貿易統計」、「OIL WORLD」

日本の植物油供給量

合計:約261万トン(2022年)
菜種油:約35%、パーム油:約27%、大豆油:約21%

<出典>農林水産省「油糧生産実績調査」、財務省「貿易統計」、「OIL WORLD」

パーム油を取り巻く環境

環境保全とRSPO認証(持続可能なパーム油のための円卓会議)

植物油脂として世界最大の生産量となるパーム油は、急激な生産拡大に伴う森林開発により野生動物や温室効果ガス排出などに大きな影響を与えています。また、農園運営において児童労働を含む人権課題や土地の権利問題などが存在します。

そのため「持続可能なパーム油の生産と利用」の促進を目的として、さまざまな業界団体が協議し、国際的に認められた持続可能なパーム油の認証団体である「RSPO:持続可能なパーム油のための円卓会議」を設立、関連法規への違反だけではなく、経済的に存続可能であること、環境的に適切で社会的に有益であることを第三者が検証する認証制度を策定しました。

サステナブルな調達に向けた取り組み|日清オイリオグループ株式会社

外食や中食産業などの業務用途において、パーム油は優れた選択肢の一つと言えるでしょう。その熱安定性の高さから、長時間のフライ調理に適しており、また保存安定性も高いので、加工食品製造にも適しています。ぜひパーム油の活用を検討してみてください。

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